アドラー心理学《注目の概念》
引き続きアドラー心理学について語っていきます。
2人兄弟がいるとします。
兄は成績優秀でみんなの尊敬を集めているのに、弟の方は、グレてしまって悪仲間と遊んでばかり。
親御さんは悩みます。
同じ子育てをしたのにどうしてこうも違うのだろうか?と。
アドラー心理学においては、これを当然ありうべきことと考えます。
アドラー心理学においては、幼少期の兄弟関係を非常に重視するのです。
このケースで言うなら、弟は兄との競合分野を避けて、自分が注目を浴びることのできる違う分野を選んだと考えるのです。
これら二つは全く正反対の生き方のように見えて、実はベースにあるものは同じなのです。
この兄弟の努力の方向性は、双方とも親や周りからの注目を集めたいという点で一致しているのです。
子供は誰しもが親の注目を浴びようと全力で頑張ります。
なるほど、弟は最初は勉強などで健全な努力をしたのかもしれません。
しかし、それで兄に優っていたなら良かったのでしょうが、叶わなかった。
頑張っても兄に勝つことはできない、そのことを認識した時、弟は戦略を変えます。
運動なのか、音楽なのか、遊びなのか、ターゲットを変えるのです。
そしてそのどれもが叶わなかった時、最後には非行や悪仲間との交友に走るのです。
健全な「ほめられる」という正の注目が得られないと負の注目を集めるよう努力していくのです。
では、あがり症(社会不安障害、対人恐怖症)の方はどうか?
ハッキリ言って注目なんていらないですよね。
ていうか、そんなもの冗談じゃない。
自分の成績や得意分野での注目ならともかく、人前での注目なんて欠けらもいらない。
全くいらない。
断じていらない。
それなのに、注目を浴びないように浴びないようになどと考えれば考えるほど、逆に注目を浴びてしまう。
本当は誰もあなたのことを見ちゃぁいないですよと言っても、過剰に見られていると思ってしまう。
そしてまるで芸能人か何かにでもなったかのように、スポットライトを浴びているような感覚に陥る。
それが快感ならいいでしょう。
しかし、そうではありませんよね?
怖れることを望まなければ望まないほど怖れることが襲ってくる。
なんと皮肉なことでしょう。
正にあがり症(社会不安障害、対人恐怖症)は、逆説の病なのです。
注目を過大に捉えると怯えます。
注目を否定すると余計囚われます。
注目はなくなることはありません。
注目は等価に受け止める必要があるのです。
あがってもいいのです。
あがるのは当然のことなのです。
人間なのです。
ましてやあがり症なのですから。
大切なことは、たとえあがっても、その場の目的に一生懸命になることなのです。
その場の目的とは、伝えること、理解してもらうこと、人の話を聞くこと、仲良くなること、会話すること、商品を売ることなのです。
さらに言うなら、絵を見ること、掃除をすること、物を買うこと、草むしりすること、ものを作ること、
何でもいいのです。
その場の目的に「なりきる」。
それこそが、あがり症者に求められていることなのです。
そして、それが「あるがまま」に目的本位に生きる、というあがり症者にとっての目指すべき姿なのです。
アドラー心理学《ライフスタイル》
アドラー心理学の概念の一つにライフスタイルというものがあります。
これは、その人の生き方のパターンやクセのようなものです。
例えば、織田信長や豊臣秀吉だったら上昇志向でしょうし、いわゆる典型的な草食系と呼ばれるような人は、争いを好まないでしょう。
もう少し具体的に挙げていきます。
例えば、私は人から好かれるというライフスタイルを持つ人は、人と接する時に自然と好かれるような仕種をしたり、自分から積極的に人と関わるでしょう。
年上の人は私を守ってくれるというライフスタイルを持つ人は、年長の方に対し、頼ったり、相談したり、時に甘えることもあるかもしれません。
世の中は危険だというライフスタイルを持つ人は、それに沿って危険に備えたり、自分の身を守ることを意識するようになるでしょう。
そういった様々なライフスタイルが良きにつけ悪しきにつけ自分の人生を彩っていくのです。
尚、ライフスタイルは概ね10歳ぐらいまでに形作られると言われています。
私達は幼少期に親や他者との関わりで、愛情や注目を得ようとしたりします。
そのために様々な行動を試し、自分の成功パターンや失敗パターンを学び、さらには自分の立ち位置を模索します。そうして学習していったパターンがライフスタイルとなっていくのです。
そして、我々は誰しもが意識するとしないとに関わらず、ライフスタイルに沿った行動をするようになっていくのです。
ふとした時に、どうして自分はこのように行動してしまうんだろう、とか、何故かは知らぬがそうせざるを得ないといったような時は、ライフスタイルが関係していることでしょう。
ちなみにライフスタイルは性格に近いですが、性格だと変わらないようなイメージがあるのに対し、ライフスタイルは変えられるものと考えます。
しかし、ライフスタイルは形成されるまで幼少期から時間がかかっているものです。
変えていくには、少しずつ少しずつ変わっていく努力が必要でしょう。
生きづらい時、悩んでいる時は、ライフスタイルがうまく機能していないことを意味します。
本質的に変わりたいと思う時は、まずは自分自身のライフスタイルに気付き、その上で取り組んでいく必要があります。
アドラーは人に聞かれ言いました。
「人は死ぬ1~2日前まで性格は変えられる」と。