主な相談先と内容

あがり症の方は、悩みを解決するために最初は自分で何とかしようとするのですが、ほとんどの場合まずうまくいきません。そしてネットなどで様々な情報を探すのですが、逆に情報があり過ぎてどこに相談していいかも分からなくなってしまいます。ここでは、あがり症に対処するための主な相談先とその比較をお伝えします。

精神科

療行為をしてくれる専門機関。あがり症に関しては、症状や心の状態について扱う。向精神薬の処方が医師の一番の強み。相談あるいは心理療法をしてくれる精神科医もいる。ただし、精神科医の心理療法はどうしても短時間にならざるを得ない。じっくりと相談したい人にとっては物足りないかもしれない。心理療法としては、精神分析、森田療法、認知行動療法があり、あがり症に有効な心理療法は森田療法と認知行動療法が知られている。医療機関の中には、臨床心理士などが常駐し、別途カウンセリングをしてくれるところもある。

 

心療内科

医療行為をしてくれる専門機関。精神科とそれほど大きな違いはないが、一般的な区別としては精神科が心を扱うのに対し、心療内科はそれに伴う身体症状を扱う。あがり症に関しては、身体症状について扱うが必然的に心の相談にもなってしまうと思われる。精神科医同様、向精神薬の処方をしてくれる。精神科と心療内科の療法を標榜している所もある。

 

カウンセリング

心の悩みを相談するところ。臨床心理士、カウセンラーなどの有資格者が本人の話を傾聴することで気づきや今後のヒント、心の負担を軽減する。資格の難易度は、臨床心理士、精神保健福祉士、産業カウンセラーや各カウンセラーといったような順。カウンセラーの資格自体が様々な機関が認定していることもあり、その専門性の担保はそれほどない。シンプルに言えば、医師もその傾向はあるが、特にカウンセラーは人によってスキルの違いは相当にある。よく調べてから受けた方が賢明。あがり症への専門性は臨床心理士にしろカウンセラーにしろ、精神疾患の一つとしての一般的知識程度。森田療法を行うカウンセラーであれば、あがり症の知識への専門性はあると思われる。

話し方教室

その名の通り、話し方の訓練をする所。人前での話が苦手な人が多く来る。実際に参加者の前に立ってテーマを決めて3分スピーチなどをする。人前での話がうまくできるように、発声練習、滑舌トレーニング、呼吸法、話の組み立て方などの指導を受ける。ほとんどの話し方教室があがり症の方に有効と宣伝しているが、あがり症の専門性については一般的な知識プラスアルファ程度の理解。基本的には話し方のテクニックを学び、自信を付けることであがり症の克服を目指すという考え方。実際に人前で練習する機会のない方にとっての練習の場ともなるが、一方状態の重い人にとっては逆に自信を失ってしまうことも。また、世にあるあがり症克服セミナーのほとんどが話し方教室を母体としたり、同様の内容を行うもの。

ボイストレーニング

これは正に声のトレーニングに特化した指導が行われる。発声練習をメインとして、早口言葉などによる滑舌練習、腹式呼吸、姿勢などの指導を受ける。対象者はあがり症に限らず、声の大きさや質を上げたい様々な人が来る。あがり症の方にとっては、声がかすれてしまったり、声の小さい人が自信を付けて間接的にあがり症の克服を目指す。

 

自助グループ

同じ悩みを持つ仲間が、共に学び合いながら一緒に克服を目指すもの。一人で悩みを抱えがちなあがり症の方にとって、自分だけでなかったとの思いで救われることは多い。森田療法の自助グループで「生活の発見会」と呼ばれる団体は日本で最大のもので約50年の歴史があり、森田療法を行う精神科医とも連携し合っている。ほぼどの都道府県にもあるが、あがり症だけでなく強迫性障害やパニック障害等の神経症と呼ばれる方々も来るので、そこは踏まえておいた方が良い。

 


 

※基本的には、あがり症の克服法のアプローチとしては、薬やスキルによって症状を軽減して自信を深める考え方と、表面的な症状よりも自分の本質的な部分にアプローチする方法があると言えます。風邪に例えるなら、前者は対症療法で解熱剤を処方するようなものであり、後者は葛根湯で体の内側から治療していく考え方とも言えるかもしれません。何が良い悪いとは一概には言えませんが、それぞれのやり方なり考え方なり、自分に合ったやり方を探していくしかないでしょう。折衷案を取るのもありなのかもしれませんね。

ただ、はっきり言えることとして、あがり症の方は表面的には違ったアプローチをいろいろと試してみるものの、根本では症状を何とかコントロールしようとする発想が元となって、かえって苦しんでいる人が多いように思えます。同じ発想でやっている限りはおそらくはうまくいかないのではないでしょうか。コントロールを手放した時、そしてあがることへの価値付けが変わった時、あがり症を治さずしてあがり症を忘れていくでしょう。

参考記事
本当のあがり症の話をしよう~あがり症の克服本と克服法あれこれを検証する
社交不安障害やあがり症の緊張は薬で治せるのか?
あがり症の相談先を知りたい方に~精神科医と心療内科医と心理カウンセラーの比較