アドラー心理学入門講座
今日は、産業カウンセラーの方々の勉強会にお招きいただいて、アドラー心理学入門という講座の講師役を務めてきました。
入門ということで概論的に幅広く説明してきました。
私がアドラー心理学が好きな理由として、未来志向であるということと自己決定性という考え方に共感できるという点があります。
未来志向でない考え方として原因志向で過去を問うというものがあります。
原因志向は勇気をくじきます。
あれが悪い、誰が悪い、~のせいで・・・等々、先行きが暗くなってより良き未来を感じられなくなります。
しかし、未来志向は過去を問いません。
今から未来に何ができるかを問います。
自分の今からの行動が未来の変革、より良き未来への可能性を感じさせるのです。
それは環境の犠牲者ではなく、人生の主体者としての自分を意味します。
同じことは自己決定性という考え方からも言えます。
自己決定性とは、環境、状況、能力、心身の状態等、いろいろな困難を抱えながらも、それにどう対峙するのか、そこからどうあるか、どう行動するかは自分で決められるという考え方です。
私はこの考え方が好きなのです。
できない理由を探すのではなく、できる可能性を考える。
できない理由から回避するのではなく、できる可能性をもとに挑戦する。
人はいかなる状況にあれ自分のあり方は自分で決められます。
あがり症の方はいかに症状があったとしても、それにどう向き合うかは自分で決められるのです。
あなたは自分の人生を実現する人生の主体者なのです。
アドラーの教え
アドラー心理学の創始者アルフレッド・アドラーは、とあるカウンセリングで睡眠障害の方の相談を受けました。
要は眠れないということです。
アドラーは睡眠薬を与えたか?
答えはノー。
当時は20世紀初頭、睡眠薬はありません。
アドラーは、日中活動や運動を勧めたか?
答えはノ―。
アドラーは入浴や日光にあたることを勧めたか?
ノ―。
答えは何か?
アドラーは言いました。
「共同体に貢献しなさい」
???
共同体とは、家族、仲間、会社、サークル、地域、国、等々、人のつながり全てを言います。
それに貢献しなさいと言うのです。
アドラーはどう考えても当時の世界のトップセラピストです。
しかもフロイトなどの哲学的、抽象的な心理学で実効性の低いものではなく、悩める人への結果を出すという意味において。
そのアドラーが、眠れない人に共同体への貢献を勧めた?
これ、私、言えません。
私の元にも眠れないといった相談は多く来ます。
メンタルヘルスにとって睡眠は最も関連性のあるテーマです。
私は必ず、日中活動や入浴、日光を浴びているか、睡眠環境等々を聞きます。
睡眠においては、日常の工夫でだいぶ改善することがあるためです。
なのでそういったことで何かできることはないか相談していきます。
そういったことをさておいて共同体への貢献?
アドラーは特に晩年において、共同体感覚の重要性を再三再四述べました。
悩める人は、勇気をくじかれており、他者への視点に欠けます。
自分のことにばかり囚われます。
そうして自分のことばかり考えてしまうと逆説的に自分にしっぺ返しが来ます。
そして悪循環となり病んでいくのです。
しかし、他者に関心を持ち、他者のために貢献する人は、自分への囚われから解放されるだけでなく、他者からの好感、信頼、感謝といったリターンを得ます。
それが好循環となっていくのです。
与えることは与えられることなのです。
アドラーは自分の元に来た眠れないと言うクライエントに対し、その背景に人との関わりに課題があることを見抜いたのでしょう。
そもそも悩める人のほぼ全ては、自分も含めた対人関係の悩みです。
ならば、対人関係をより良くしていくことで睡眠の問題も解決されるはずだと考えたのかもしれません。
そして一言、「共同体に貢献しなさい」
100年前の先哲、アルフレッド・アドラーの教えに、今、時代はようやく追い付いてきたのかもしれません。