外相整って自ずから内相熟す

認知行動療法のなかに行動活性化という技法があります。

これは、例えばうつ症状が重いような時にはあれこれ考えるよりもむしろ、何らかの活動をした方がかえって状態が良くなるというものです。

例えばうつが重い時、動くのが億劫になります。

家に引きこもりがちになります。

あれこれマイナスなことを考えます。

ますます気落ちします。

うつが悪化します。

・・・

 

負のスパイラルですね。
体調が回復するまではと思って行動を控えたことが逆効果となるのです。

そこで行動活性化です。
調子は悪くても作業に集中しているうちに、ふと気づくと自分の体調不良のことを忘れて没頭している。

ましてやその作業が自分の好きなことならなおさらです。そうして行動を通して気分を改善させていくのです。

この行動活性化技法と同じような考え方に、森田療法の中の作業療法があります。

あがり症の方は、心身ともに落ち着くまではと言って行動を控えがちになります。

すると内面的には葛藤や自己否定が始まります。

そうして自信をなくしていくわけですが、ここで心身ともに調子の悪いままに何らかの作業をするのです。

最初は頭が痛いし、体が重いし、ドキドキするし、嫌々ながらです。

しかし、面白いもので作業をしていると、やがてそれに集中し、ふと気づいたら体調不良のことなど忘れてしまうことがあるのです。

「外相整って自ずから内相が熟す」と言います。

制服効果と言って、人は服装に合わせた気持ちになります。

眉をわざとしかめると気持ちまでそういった気持ちになります。

いかに外側を整えることが大事なことか。
異なる精神療法が似た視点のアプローチを取っている。ここに何らかの真実があるのではないでしょうか。

 

誰のアドバイスが効く?

認知行動療法という精神療法があります。
以前に詳しくこのブログで書きましたが、この療法は、実際に効果があるという実証的データがあり、精神科医がこの療法を行うと診療報酬が得れらるのでどんどん普及しています。

出来事があった時にどんな思考をするかによって人の気持ちは大きく変わってしまいます。

ですから、その思考の仕方次第では自分を苦しめてしまうことがあります。そこで、極端にマイナスでもなく極端にポジティブでもない、健全な思考を持ちましょうというのが認知行動療法なんですね。

それで、私の職場で来月か再来月からかで、この認知行動療法を集団向けに、つまり集団認知行動療法として始めていくことになりました。そして、本来は連続講座なのですが練習的な意味も込めて、今日、単発でそれを行いました。

そこで、出席者のAさんの例をピックアップして七つのコラム法と呼ばれるワークをしました。
Aさんは、つい最近ある就職先が決まっていたのですが、その出勤初日の前日に急遽この話はなかったことにしてほしいとの連絡を受け、しかも特段の説明もなかったことにショックを受けていました。

普段は優しく癒し系なAさんが、怒りのレベルが100%だったと言うぐらいかなり酷な出来事でした。
Aさんはその時の思考としては納得できないというものが一番強かったようです。

そりゃそうですよね。そんな事態、誰しもが納得できないです。
そこで出席者の皆さんに意見を聞きました。

こんな状況になったAさんに皆さんならどんなアドバイスや声をかけてあげますか?と。

すると、いや~出るわ出るわ。

「そんな会社かえって入らなくて良かった。」
「こっちから願い下げだ。」
「きっとあなたに合った別の会社が見つかります。」
「入る前に分かってむしろ良かった、入った後でトラブルになったらもっと大変だった。」
「ひょっとしたら、これだけのことをするほどの何らかの事情が会社にもあったのかもね。」
・・・etc

ここで大事なことの一つは様々な視点があがることです。
大きなストレスを感じるような状況では、ものの見方がある一面からしか見られなくなり、どうしても偏りがちになります。そういった時に様々な視点からものを見ることで、偏りが和らぎ、それが自分の気もちをも緩めていくのです。

そしてもう一つの大事なことは、というより一番大事なことは出席者からのアドバイスです。
支援者側が一段高い所であぁだこうだと言うより、同じような悩みを持った仲間のコメントは百倍入りやすいんですね。

この時のAさんも、みんなからの色んなアドバイスを聞いていくうちに次第に表情が和らいでいきました。
これがグループワークの強みです。
いや~、私なんかがペラペラ喋るよりよっぽどいいです。

そして、最後に肝の質問をします。
ここまでやってみて、最初に話した怒りという感情が100%だったわけですが、今現在の怒りの感情は何パーセントになりましたか?と。

Aさんは答えました。
「20パーセントです」

私は大仰に答えます。
「そんなに下がったんですか?!」

内心、やったーという気持ちです。

Aさんは満足げにお帰りになりました。それを見るこちらも満足です。
ここまでいつもうまくいくとは限らないでしょうが、集団認知行動療法を早くやっていきたい気持ちに駆られる一日でした。