マンツーマン傾聴講座

先日、ある方が私の所に来られて、傾聴の訓練をしてほしいとの依頼がありました。
ほえ?といった感じで聞きましたが、よくよく聞いてみると、これまで職場でうまくいかなかったのは人間関係によるものだと。

どうしても職場で孤立してしまう。
嫌われているに違いない。
空気読めない。

まぁ、たしかにその方が話している時は、もう言わずにはいられないといった感じでまくしたてるように話す所はありますが、それで嫌われるとまでは言いすぎなような気がします。

しかし、一方、専門職として働いていた職場で、雇用を延長しないと言われて辞めることになったのにはそれ相応の理由があるに違いありません。
しかも本人に改善したいというニーズがあります。

私はその話に乗りました。
1時間の間、マンツーマン指導です。

まずは、お地蔵さんコミュニケーション。
聞き役は、話し手が話している時に、お地蔵さんになります。
一切動かないのです。
つまり、相手の話にノーリアクション。
口も目も体も一切動かない。

たった1分ですが、話し手はしんどいです。
反応がないのはつらいものです。
聞き手も同様。
反応したいのに無反応でいなければならない、せめてうなづきたいのにうなづけない。
結構しんどいです。
その方は話し手役で1分やったらグターっとへたり込みました。
「いや~しんどいです」と。
役割を交代してもう一回。

次に、聞き手は無言でうなづきだけのコミュニケーション。
うなづきに大振り小振り等バリエーションを付けて無言でやる。
これだけでも結構、聞き上手になれます。
その方は驚きます。
「へー、びっくりです」と。

続いて、加えて「うん」という言葉だけは発して良いというもの。
聞き役はうなづきに加え、「うん」、「うんうん」、「ぅん」、「う~ん」、「ん~」等の「うん」にバリエーションをつけて聞きます。
お互いに役割を交代して聞き役と話し役をやりました。
その方は、私の聞き役を見て感動です。
「へー!、これだけでこんなになるんですね!」

向上したい、吸収したいという意識が強いと、感性がそこに研ぎ澄まされます。
普段は何気なく見過ごしていたコミュニケーションの奥の深さに気付いたのです。

よし!鉄は熱いうちに打て!
ということで、私はメラビアンの法則を説明しました。

それは、人のコミュニケーションには三つの要素があるというものです。
人の話を聞いている時、相手の話の内容、声のトーン、表情や身振り手振りの三つの要素から、人は情報を受け取ります。
そして、その三つの要素から受け取る情報量はそれぞれ割合が異なります。

まず、言葉そのもの、つまり話の内容ですが、それはなんと7%にすぎないのです。
そして、声のトーンの割合。
それは38%。
そして、最も大きな割合を占めるのが表情や身振り手振り。
これがなんと55%と半分以上を占めるのです。

私は実際に実演して見せました。

話の内容は立派なのに、声のトーンも表情も全然やる気なさそうな話し方。
話の内容も声のトーンもいいのに、目は変な方向を向き、だらしない恰好でせわしなさそうに話すパターーン。
そして最後に、話の内容も声のトーンも、身振り手振りも一致した話し方。

その方はさらに感動です。
感動は学びです。
感動なき学びは、浅薄になりがちです。

その他に私独自の「ハ行の法則」というネタ。
そして最後に、その日にやった全てのスキルを統合した聞き方をやって終えました。

傾聴スキルの初歩を1時間訓練しただけで、明らかにその方は変わりました。
何十年も生きてきて身に付けた聞き方が変わったのです。

その方も感動でしたが私も感動です。

あがり症、対人恐怖症、コミュ障と呼ばれる方々は、会話の仕方に悩みます。
なんて話せばいいんだ?
話が続かない。
会話のネタは?
話すタイミングは?

しかし、話し上手は聞き上手です。
話し方は何ら変わらなくても、人は会話のスキルを上げられるのです。

私は今回の訓練を終えて改めて確信しました。
使える!

あがり症の方への支援法だけでなく、一般の方々や対人援助の専門職に対しても有効であると。
よ~し、いろんな方々に傾聴講座をやっていこう。
そう思った瞬間でした。