私たちは日々様々な感情を体験しています。

感情には、愛、安心、憎しみ、怒り、妬み、嫉妬、不安、恐怖、喜び、失望、悲しみ、等、様々なものがあります。

これらの感情が何かの時に湧き上がるのは自然なことであり、人が人である以上、誰もが体験することなのではないでしょうか。

ですから、たとえその感情が苦しかったり辛かったとしても、そう思ってしまう自分は情けない、恥ずかしいなどとは思う必要は本来ないはずです。

湧き上がる感情そのものには責任がないからです。

ところが、あがり症の方々はあがることに伴って生じる感情を否定します。

不安、心配、恐怖、緊張、失望、戸惑い、等々。

そして、この不安、この緊張をなんとかしなきゃ、ビクビクしたりドキドキしちゃいけないなどと、誰かにバレることを恐れて、蓋の重い箱に感情を閉じ込めます。

そして、それらの感情が消化されず箱の中に放り込むことでパンパンになり、どんどん苦しくなっていきます。

それでも、感情を表現することに恐れを抱きます。

人にどう思われるかばかりを気にして、人の目にかなう自分であろうとします。

だから、人の目にかなわぬ自分は隠し、かなっているかのような自分を演じます。自分ではない誰かを演じるように。

それはさながら、お面をかぶって舞台に上がっているようなものです。

言いたいことを言ってギャハハと笑っている噂好きのおばちゃんとは真逆です。

あそこのご主人がどうの、あそこの奥さんがどうの、あそこの子はこんな感じなのよね、うちの子の担任がひどいのよ~、等々言いたい放題だったり、あるいは、きゃー!、ショック~、緊張する~、そんなのイヤよ!、等、思ったことをそのまま誰にも気兼ねせず言える人を見て、時に羨ましく感じることもあるでしょう。

そういった人たちは、そこに自己一致があります。

あがり症の方は自己不一致しているのです。
自分を生きていないのです。

かくあるべき自分と現実の自分のギャップが自分を苦しめます。
本当はうまくやりたいのにそれができない。
もどかしくてたまりません。

あがり症の方に必要なことは自分の感情と自己表現を一致させることなのです。

不安なら不安なことを言う。

嬉しいなら嬉しいと喜ぶ。

イヤな時はイヤと言う。

喋りたくない時は喋らなくていい。

緊張している時は緊張していると言う。

やりたくないことはやらない。

感情と行動が一致すること。
それを「あるがまま」と言います。

自分の顔にかぶせたお面を外し、自分をさらけ出す。
その「あるがまま」の姿勢が、逆説的に自分を守ることにつながります。

なるほど、理屈はそうかもしれないんだけど・・・となるかもしれません。

たしかに、実際問題、じゃあ明日から感情をあるがままに表現しますなんて言ってできればいいんでしょうが、そんな簡単にできるなら、もうさっさと治ってますよね。

そのためにどうすれば良いかには発想の転換が必要です。
そもそも感情を何とかしようとして何ともならなかった結果があがり症の意地です。

感情に悩むがゆえに感情を何とかしようというアプローチが、もしかしたら感情をコントロール不能にしているのかもしれません。

だから、一度感情を手放してみること。
感情にはノータッチです。

じゃあ、何にタッチするのか?
それは行動です。

たとえあがっても、たとえ緊張しても、たとえ真っ白になったとしても、たとえ感情はどうしようもなくても、今目の前にある何らかの行動はできるはずです。

緊張しても手は動かせるかもしれません。

声が震えても震えながら読み始めることもできるはずです。

頭が真っ白になったとしても、えー、あのー、今、頭が真っ白になっちゃって、などと現状を言えるかもしれません。

そうです、私たちはできることできないことを仕分ける必要があるのです。

あがり症の方はあまりの苦しみに混乱して、不安や緊張ばかりを何とかしなきゃと不可能なものにばかり取り組むから、余計はまるのです。

だから、感情にはを付けずに行動に手を付ける。
可能なことは行動にこそあります。

感情は意志の自由にならなくても、行動は意志の自由になります。

あがり症の方は、あまりの悩みっぷりと、なかなか人に話せないようなことが相まって、頭の中の世界であがり症を考えるようになります。

その時、現実から遠ざかり始めます。
頭の中の想像の世界で現実を展開させます。

まさに、バーチャルリアリティーの世界です。
そこにないのにそこにある。

あがり症の方は、何が今の自分にできることで、何ができないことなのか、一度振り返ってみてよくよく考えてみる必要があるのではないでしょか?

今日のポイント

・湧き上がる感情そのものには責任がない

・あがり症は人にどう思われるかばかりを気にして、人の目にかなう自分であろうとする

・あがり症の方は自己不一致している。必要なことは自分の感情と自己表現を一致させること

・感情を手放してみる

・感情は意志の自由にならなくても、行動は意志の自由になる

(参考動画)