各種心理療法

前回は、服薬のことについて書きました。
その中で、あがり症(社交不安障害、対人恐怖症)の方の治療において最も再発率が低いのは、服薬+心理療法と書きました。

なので、今日は心理療法についてお話しさせていただきます。

ここでの前提としては精神科医の行う心理療法ということです。
シンプルに言って精神科医の行うことができる心理療法は主に4つです。

精神分析、認知行動療法、行動療法、森田療法。

臨床心理士やカウンセラーが行うことのできる心理療法に比べて限定されています。
まぁ、本来が医者ということですから当然と言えば当然です。

それで、あがり症の方向けにという点で考えるとどうなのか。

まずは、精神分析ですが、これは旧来の精神科医が普通に学んできたフロイトの理論がベースにあります。
現在はエビデンス(科学的根拠)がないと言われています。
もちろん、達人みたいな医師もいますが、あがり症治療については私はお勧めできません。

次に認知行動療法。
これは、今日本だけでなく世界中に広がっている最も信頼性の高い療法と言えるでしょう。
なぜならエビデンス(科学的根拠)があるのですから。
つまり、効果があったかどうかの測定をして結果が示されているのです。

ですから、今、精神科医が心理療法を学ぶと言ったら、まずは認知行動療法かと思います。

ということであがり症の治療においても結果が出ています。

そして次に行動療法。
これは、認知行動療法もそうですが、より一層、枠組みがガチっとしています。
情と理という視点では、情が入らないのではと言っていいぐらい論理的です。
これを学ばれている医師はそれほどいないかと思います。

ちょっと詳しくは分からないのですが、あがり症の方にはおそらく一定程度の結果は出しているのかなとは思います。

そして森田療法。
これは日本発の数少ない心理療法の一つです。
他の精神療法とは色合いが全く異なります。

他が西洋的な学問をベースにしているのに対し、森田療法は明らかに東洋的です。
つまり、西洋の心理療法が症状そのものにアプローチするのに対し、森田療法は症状だけでなくもっと本質的な所にアプローチするのです。
イメージ的には漢方や禅に近いです。

あがり症に対しては結果が出ています。
ただ、これを使える医師は多くはありません。

なにせ深い。
こういった比較がどうなのかは微妙ですが、認知行動療法や行動療法を学ぶよりも、より人間学や哲学等への視点も持ち合わせた療法です。
私見ですが学ぶ難易度が違います。
ちなみに使いこなす難易度も明らかに違います。

で、いろいろ挙げましたが、あがり症の方向けの心理療法で私が選択しているものとしては、森田療法がメインです。
特にあがり症のメカニズムや治療の視点という意味では、私は8割以上森田療法に依拠しています。

実際の臨床場面では、これらの療法以外のブリーフセラピーという療法も相当使います。
他に勇気づけの心理学アドラー心理学も使い、認知行動療法はちょこっと使うぐらいでしょうか。

何がいい、何が悪いとはあまり言えません。
カウンセラーや精神科医によって自分が得意とする療法は異なるからです。

ただ、あがり症の仕組みやあがり症に対する治療の視点という意味では森田療法以上のものは私はないと思っています。
あまりにも見事すぎるからです。
これはかつて当事者であり、かつ、今あがり症の方を支援しているものとして断言します。

ただ、あがり症に対する治療の技法はこれまで挙げた心理療法だけでなくいろいろな選択肢があるでしょう。