効率化の罠

私は日頃、仕事をしている中でメモが欠かせません。
基本的に忘れっぽい人間ですから、やるべきことを忘れないように必ず書きます。

よくある5cm☓5cmぐらいの付箋に書いていくのです。
例えば、〇〇さんにTELとか、〇〇資料作成、〇〇にメール、報告書作成、等々を付箋に2列で、必要事項が発生する都度書き出します。

そして、なすべきことが終わったら、その項目に二重線を引いて消すのです。
こうしておくことでほとんど忘れることはありません。

以前は、その中でも優先順位を付けるために、付箋の縦半分横半分に線を引いて4等分し、緊急度と重要度のマトリックスを使って処理していました。

そうすると、なすべきことリストが4つに分けられます。

1.重要かつ緊急性のあるもの。
2.重要だが緊急性のないもの。
3.重要ではないが緊急性のあるもの。
4.重要でも緊急でもないもの。

こうしておけば、一目瞭然です。
私の場合は、スイッチが入っている時は、1番からがっつり取り組みます。

ちょっとまだテンションが低くて助走が必要な時などは、3の重要ではないが緊急性のあるものから入り、ウォーミングアップしてから1へと移っていきます。
2と4は気が向いた時にやるぐらいです。

こうして仕事の効率化を図っています。

ところが、うつ病になるとこれが上手くいかなくなります。
脳が疲労して働かなくなりますから、1や2のようなおそらく複雑さや困難さを兼ね備えているような事案には、とても取り組めません。

いいとこ3でせいぜい4ができるぐらいでしょうか。
非効率的ですね。
こうしてなすべきことが全く手付かずになり、やがて行き詰ってしまうのです。

では、あがり症(社交不安症障害、対人恐怖症)の方の場合はどうか?
彼ら彼女らは非常に効率的です。
ただし、仕事ではなく問題に対して。

それはどういうことか?

あがり症の方々の前には当然複数の問題が起こります。
日常の瑣末なことはさておき、やれ学校にあまり行かなくなってきた、対人関係がうまくいかない、友達ができない、彼女ができない、仕事が上手くいかない、単位が足りない、就職できない、etc・・・

そこで、彼ら彼女らは効率化を図ります。
これら全てのことが上手くいっていないのは、ひとえにあがり症であるが故と。
あがり症が悪の根源であると。

そして考えます。
これさえなければ、と。
あがり症でさえなければ全ての問題は解決する。
あがり症さえ治れば全てはうまくいくはず、と。

そうしてあがり症退治へと向かうのです。
その一点に全能力と全資源を注入するのです。

あがることに耳を研ぎ澄まし、あがったらそれに対して様々な策を講じる。

私は、あがり症に悩む全ての人に聞きたいのです。
それでうまくいったことがありましたか?と。

そうです。
一点に資源を集中したことで、却ってあがり症の症状は炎上してしまうのです。
効率化の悲劇です。

我々に必要なことは、あがることに対処することではなく、あがることはそのままに、今その場の目的に対処することなのです。

 

うつ病の特徴

ある調査では社交不安障害の35%~80%がうつ病が併発するというデータがあります。
分からなくもありません。

社交不安障害に苦しんでいる時は、そりゃあ、うつ病にもなります。
自己否定しまくりで内に閉じこもりますから。

それで、そのうつ病ですが、実は最初のうちは気付かれにくい病気なのです。
うつ病はまず最初に身対症状から来ると言われています。

微熱が続きます。
なんか調子悪いなぁと思い、医者に行きます。
特に何かと診断されるわけではありません。

慢性的な頭痛がします。
おかしいと思い内科に行き、それでも納得できない場合は神経外科あたりに行きます。
特に問題ありません。

字が読みづらくなります。
眼科に行きます。
異常なしとなります。

こうしてドクターめぐりしているうちに、やれ眠れないだの食欲がないだのしている内に医者の方も気付きます。
メンタル面が影響しているのではないかと。

この段階で治療に入れた人はラッキーです。
精神科医の仮屋暢聡先生はその著書で言っています。

「治療期間は、発症から治療開始までの時間に比例しますから、早く治療を開始すればするほど、早く治るのです。精神症状が出るところまで行ってしまうと、治療にかかる時間も長くなってしまいます」と。

つまり、うつ病の治療においては早期発見・早期治療が鉄則なのです。
逆に言えば、10年ぐらいかけて、うつを悪化させていったのなら、回復も10年はかかるだろうということです。

うつ病の可能性のあるチェックポイントを挙げておきましょう。

・微熱
・食欲不調
・睡眠の不調
・集中力がなくなる
・優先順位が付けられなくなる
・体のあちこちが痛くなる
・動きが緩慢になる
・姿勢が前かがみになる
・新聞が読めなくなる
・朝がつらい
・怒りっぽくなる
・肩こり・動悸
・風呂に入れない
・料理が作れない
etc・・・

こうして見てみると、体の症状が我々自身に悲鳴をあげて気付かせようとしているのかもしれません。
私達には、体のいうことに素直に聞くことが求められているのに違いありません。