ヨコの関係の強み
今日は東京都内のフリースペースの見学に行ってきました。
フリースペースとは、引きこもりの方々がまずは家から出て次のステップとして日中過ごす場を提供する所です。
家から出ていきなりバイトなり就労なりとはそうは簡単にはいきませんので、そのためにこういった場があります。
今回は支援機関側が8名、都庁や見学会主催者側2名、施設側4名が来て、説明会や質疑応答なども行うやや大がかりなものとなりました。
そして施設側4名の中に、実は当事者、すなわち引きこもりからの脱却に向けてフリースペースに通っている方が2名含まれていました。
二人とも20代と思われる女性の方です。
引きこもり者は、もとから社交不安障害ゆえに引きこもりになる方や、二次的に引きこもりになったがゆえに社交不安を抱えるようになった方など、社交不安状態の方が結構な割合でいます。
今回出席したお二人の方はおそらく選ばれし者なのでしょう、ある程度はお話できます。
特にお一人の方は結構理知的にお話されます。
ただ、それでも様子を見るに明らかにかなり緊張しています。
それはそうでしょう。
社会と接することができなくて引きこもっている方々が、こんな大人の社会人達にズラーッと囲まれて自己紹介したり、質問されてお話をしているのですから。
私もそちらに座っていたかもしれない人間ですから痛いほど気持ちは分かります。
それでも私は運営者側だけでなく彼女たちにも質問しました。
過剰なまでの配慮は優しさではないですし、質問もされるであろうこの場に覚悟をもって臨んだ彼女たちに失礼でもあります。
そのうちの一人が自分の体験を語っていく中で、自分にとって何が良かったかという話に入った時、彼女は言いました。
自分はいろいろな所に相談に行ったり、カウンセリングなども受けたが、一番良かったのはこのフリースペースに来て同じような悩みを持つ方々と、悩みを共有できたのが一番良かった。
一人ではない安心感や他の人への共感を持つことができた、と。
これなんですね。
カウンセリングなど支援者側ではどうしてもできないことは。
世の中には様々な○○会という名称での当事者会があります。
統合失調症の親の会、拉致被害者の会、アルコール依存症の方の断酒会、あがり症で言うなら生活の発見会という当事者会、等々。
中には「ピア」という仲間を意味した言葉もあります。
精神関係領域では普通に使われることも多いです。
ピアカウンセラーという職業もあります。
支援者ー当事者というタテの関係でなく、当事者ー当事者というヨコの関係は独特の強みを持ちます。
それは分かりあえるという共感意識、そして同じ悩みを持つ仲間という仲間意識により、支え、かつ支えられ、そして勇気づけられるという関係です。
私はいずれ、あがり症の方々向けに、支援者ー当事者というタテと、当事者ー当事者というヨコをからみ合わせたワークショップを始める予定です。
おそらく一年後ぐらいでしょうか。
そこにこれまでの知識と経験を全部活かして全力で臨むつもりです。