睡眠障害の心理機制

日本人の5割ぐらいは何らかの不眠に悩んでいると言われています。
実際、身近な人を見ても結構いますね。

私の父親もそうですが、なかなか偏屈な人間で、眠れなくてブツブツ言いながらもきちんとした対応策を取ったりせず、しかも大の医者嫌いなので全く良くならず、周囲は辟易としています。

私も、動機付け面接法だのカウンセリング技法だのと色々学んだものの、実の親にはブーブー文句を言ったり呆れて放置したりと、対人援助者としてのあり方と全く真逆で何ら効果のなさそうな対応をしています。

理屈と感情は異なるからでしょうか、それともこれまでの関係性からか、本当に対肉親は難しいなぁと感じます。

それでこの睡眠障害ですが、その中でも本当に何らかの体質や疾患から眠ることが困難な人もいるのですが、実は不眠を訴える人には本当はある程度眠れていたり、さらに言えば気にするあまり逆に余計眠れなくなっている人もいます。

本来、睡眠は無意識にリラックスして気付かないうちに寝入るものなのですが、不眠に悩む人たちは最初は何かのきっかけで眠れなくなり、それが続くと今日も眠れないのではと意識するようになります。

すると眠る前に気構えるようになります。
「眠らなければならない」というやつです。
眠れないのでは、という不安を凝視し注目し続けることで余計に不安が増します。

本来、睡眠の深さには波があり中途覚醒するのは自然なことです。
そしてその時に当たり前に受け止めていればやがてまた眠りに入るのに、不眠症者はまた起きてしまったと不安になり逆に覚醒度が上がって寝つけなくなる。

不眠をあってはならないことと捉え、そこに意識を集中すればするほど逆に不眠になっていくのです。

これって何かと似ていませんか?

そうです。
あがり症の心理機制と全く同一のものです。
こういった思考パターンを取る人を森田正馬は神経質症的性格と呼びました。

であるとしたら対処法は同様になります。
少しぐらい眠れないことや起きてしまうことをあるがままに捉えること。
あるいは逆説療法的に眠ってはならないと指示することも有効かもしれません。

いずれにしてもこういった場合はブリーフセラピーという心理療法の理念が役に立ちます。
「上手くいっていないのなら何か別のことをせよ」

当たり前のようにも思えるシンプルな言葉なのですが、実はこれができずに同じことを繰り返して悩んでいる私の父親のような人が、世の中にはたくさんいるのです。

 

電話恐怖対策(考えるな、行動しろ)

電話恐怖症というものがあります。
学生の時はまだしも社会人となった場合、仕事上どうしても電話に出なければならないことがあるでしょう。

しかし、なにぶん経験が浅いと上手く答えられるだろうか、言葉が突っかえないだろうかなどと不安になります。
しかも周りに人がいると余計に緊張します。

自分の失敗した所を見られるのではないだろうかなどと考え、次第に人が少ない時とか周りでこちらのことが気にならないようなタイミングを狙って電話をかけたりするようになります。

こうなってくると予期不安の虜になります。
電話の音に怯えるようになりますし、電話するときは事前に頭の中で話す言葉を暗唱するようになります。

そうして備えれば備えるほどより意識してますますうまくいかなくなる。
もう、負のジレンマですね。

かくいう私も、若い頃に働いていた場所が街のマージャン店だったため、それほど電話対応はせずに過ごしてきました。そうして今の仕事に入って、電話対応は必須です。

新人で慣れない環境で、さらに周囲に人がいる時は緊張のるつぼです。
私も当然のようにドキドキです。
しかし、私の事情などお構いなしに電話は掛かってきますし掛けなければなりません。

「も、もしもし(ドキドキ)・・・わ、わ、わた、わたくすぃ・・〇〇のしゃ、しゃ、しゃとう、佐藤ともうしますぃ・・」(ちょっと誇張気味)
相手は「ほえ?」です。

そんな感じで私の電話ヒストリーは始まりました。
しかし、毎日がそりゃあもう電話するわするわ。

その辺の会社のお偉いさんや様々な行政機関の方々、父兄、当事者等々、毎日が電話の日々です。
次第に慣れていきます。当たり前に受け答えもできるようになってきます。

しかし、もともとがあがり症である私は、やはり企業の社長さんなどのお偉いさんに電話したり、あるいはプレッシャーのかかる案件を話す時に過剰に緊張してしまうことは、なかなか治りませんでした。

そんな日々を送る中で、私が身に付けたコツは自分に考える暇を与えないというものでした。
あがり症の人は時間があると、とにかくロクなことを考えない。

やれ、失敗したらどうしよう、上手く言えるだろうかなどと負の妄想を膨らませていきます。
そして電話を取る際に逡巡し、これこれこうだから後にしようなどと自己正当化します。

そうしてプレッシャーがかかるような物は後回しにすることで、いかにそれが大変なことかを自分自身に植え付けます。こうしてモンスターを作ってしまうのです。

なので私は、イヤのものはエイヤッと清水の舞台から飛び降りるようにサッサとするようにしました。
もちろんドキドキです。

そして、終わった後もあがり症の人は、やれ、声が震えてしまった、やれ、もごもごしてしまったなどと余計なことしか考えないので、即、次の電話なり、次の仕事に取り掛かるようにしました。

こうすることで電話するその時は緊張はするものの、予期不安と予後振返りで自分を痛めつける時間が大幅に減りました。

だいぶ前に亡くなったハリウッド俳優のブルー・スリーは言いました。
「考えるな、感じろ」

私はあがり症の人に言いたい。
「考えるな、行動しろ」