処方薬乱用と過量服薬

今日は私が所属する電話相談員研修の講師役を務めてきました。
これは毎月行われるもので、所属する相談員がそれぞれのテーマ毎に講師役を務めるのです。

私の今回の研修内容は、以前に参加した自殺対策研修の研修報告となりました。
これは国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生が講師を務められたもので、内容は「処方薬乱用と過量服薬の理解と対応」というものでした。

松本先生は、依存症や危険ドラッグの分野の第一人者の方で、今や講演・セミナー等に引っ張りだこの状況です。超専門的な内容を素人でも分かりやすくスピーディに、しかもお笑い芸人並みの話術でグイグイ引っ張っていくため、あっという間に時間が過ぎていく印象です。

それで、今回の講師役ですが、こういった場合にはあがり症の人は予期不安が起こり、あの独特のモヤモヤした真綿で心臓をギューッと締められるような気持ちを味わうことになるはずなのですが、今回はそれがほとんどありませんでした。

もちろん、私はあがり症回復者とはいえ、普通に人並み以上に緊張します。
なので最初は油の切れた機械のようにギシギシ言わせながら、しかも日本語的にも若干違和感があるような話し方で始まりました。あとの時間の長さが気の遠くなるような長さに感じ、声が今にも震えそうです。
例のヤバいという思いが湧き上がります。

やがて5分ぐらい経った頃でしょうか、私があがることを忘れるのは言葉に感情の抑揚がついてくる時なのですが、それが始まりました。

聴衆に語りかけるように話し始めた時からマイワールドに入っていき、結構専門的な内容をペラペラと喋ることができました。

今日話した内容は依存症や自傷行為などについてですが、それぞれがナカナカ興味深い内容なので、ブログで何回かに分けて書くこともできますが、このブログのテーマが「あがり症を語る」なので要点を箇条書きで書きます。

もし、要望があれば明日以降詳しく書こうと思います。内容は以下になります。

・乱用薬物はかつては覚せい剤とシンナーがメインだったのが、最近は危険ドラッグと睡眠薬や抗不安薬などの処方薬の割合が増えている。

・処方薬に依存するのは「快感」を求めるのではなく「苦痛」を取り除きたいから。

・処方薬依存患者の薬物入手ルートは裏の世界ではなく、当然ではあるが表の精神科医師からである。

・過量服薬(OD)は致死性は低いが、それによる酩酊時に衝動行動からの自死や嘔吐による窒息死といったケースがあるので安易に見過ごしてはならない。

・精神科診療では「フライング処方」と言って、見立ての誤りから適切な処方が行われないことがある。

・また、即効性の高いベンゾジアゼピン系の薬を安易に処方しがちである。(ベンゾジアゼピン系とは、睡眠薬や抗不安薬など依存性が高いもの)

・その中でもデパス(エチゾラム)は頭痛や腰痛などにも効き、独特の飲み心地から薬物依存症者に熱烈なファンが多くもっとも止めづらい薬物である。

・ベゲタミンは禁忌。

・本来、薬剤師は医師の処方が疑わしければ疑義照会と言って問い合わせることができるのだがそれが機能していない。医師御用達の門前薬局では、医師の顔色を伺ってしまうため特にそれができない。

・過量服薬(OD)によって救急搬送される人が増えており、救急医はそれを処方する精神科医に対して烈火のごとく怒っている。

・死んではいけないと言うのは死にたいほどの思いを抱えている当事者には響かない。安易な言葉。

・自殺を決意した当事者は援助者に意図を伝えない人が多い。

・処方薬依存者には、自傷、過量服薬、過食、拒食、暴力などの衝動行為の存在が見られる。

・また、虐待や親がアルコール依存症でDVだったといった困難な生活歴を有している人も少なくない。

・リストカットや過量服薬(OD)は耐えがたいような感情のモヤモヤを解決しようという自己コントロール行為。

・処方薬乱用・依存症者は、他者に対する不信感を持ち人に援助を求めることをしないことが多い。

・精神科医は疲弊している。3分診療などと呼ばれるぐらいの診療はそれだけ多くの診察をせねばならないということであり、お昼ごはんも食べずに夜までやっている医師もいる。

・そういった状況においてはじっくり話を聞くのではなく、薬物を処方して即効的結果を求めてしまうこともままある。

・それは、医師が薬物療法依存にかかっているとも言える。

以上になります。
私は医師でも薬剤師でもありませんので処方薬については専門性を有していません。あくまでセミナーを受講した研修報告である事をご了承ください。

 

話し方教室の思い出

ちょうど4年ほど前の今頃でした。
私は前職を辞め、新たな学びのために東北から上京しました。そして社会福祉士という資格を取るために専門学校に入りました。

新たな道には私が苦手とすることが多く想定されました。それは会議などの人前で話す機会が増えるのではないかということです。

私は焦りました。
なぜなら3月に専門学校のオリエンテーションがあり、その際に4人一組になって自己紹介をした時に、緊張のあまり名前だけ言って終わってしまったのです。

他の人は自分の出身やなぜここに来たのかなどを饒舌に語っていきます。
私は恥ずかしいやら情けないやらで顔から火が出る思いでした。

このままでは会議どころではない。それ以前の問題だということで私は慌ててあれやこれやと役に立ちそうなことを探し始めました。

そして見つけたのが話し方教室でした。
すぐさま申込み、第一回目の講義が始まりました。

私は圧倒されました。
皆さん、一体ここに何しに来てるんだと思わざるを得ないほど上手に話します。私は清水の舞台から飛び降りるかのような気持ちで必死についていきました。

そして参加者の中に私と同じく、今回が初めての主婦の方がいらっしゃいました。明らかに表情が硬直しています。相当緊張しているんでしょう。

やがてその方の番に回ってきました。
その主婦の方は椅子から立ち上がり、前の方へと歩いていきます。

そして前方の中央に立ち、話し始めようとします。
声が出ません。
あまりの恐怖に泣き始めました。

私には痛いほどその方の気持ちが分かりました。
返り際、私はその方に声をかけました。そして森田療法の本があるのでそれを参考にされてはいかがかと話しました。その方は興味深そうに私の話を聞いていました。

私はその方とはその後会っていません。
今頃どうしているんだろう。
春が来ると時々思い出します。