スケーリングクエスチョン
ブリーフセラピーという心理療法で使われるテク二ックでスケーリングクエスチョンと呼ばれるものがあります。これは、ある状態を数値化する質問のことを言います。
例えば、今の気分は0~10の間でどのぐらいですか?
この時の怒り具合は0~100パーセントで言うなら何パーセントぐらいですか?
といったものです。
仮に、今の時点での仕事の満足度を聞いたとしましょう。
すると70%と答えたとします。
そこで聞きます。
もし、この70パーセントが80になった時どうなっているでしょう?
相手はここで考えます。う~ん、そうですねぇ、といったように間を置きます。
そして次のように答えたとしましょう。
①もっと活動の幅を広げていくべきでしょうね。
②上司が自分の仕事を認めてくれるといいですね。
③クライエントの笑顔が増えますね。
今後実現する可能性があるのは①~③のうちどれでしょうか?
答えは③です。
私達が未来を想像するうえで、こうあるべき~、こうなってたらいいな、こうなってる、という三つの水準があります。
上記の例で言うと
①は「~広げていくべき」という義務
②は「~認めてくれるといい」という願望
③は「~増えます」という必然
になります。
「~べき」という義務の場合、その後ろには「でも」という言葉が続きがちです。「でも、なかなか時間がなくて~」といったように。
また、「~だといい」という願望は義務よりも一段上の段階ですが、それでも同様に「でも」が続きがちです。「でも、実際難しいんだよね」と。
そして最後の「~ます」という必然に対しては「でも」はつきません。当然こうなっているということを意味するからです。この必然を未来イメージで想起できた時が最も実現可能性が高いのです。
そしてスケーリングクエスチョンによって必然の未来の答えを引き出せたときには、その時の状態を根掘り葉掘り聞いていきます。
「その時何が違ってますか?」
「相手はどんな反応をしますか?」
「あなたは何と話しますか?」
こうやって必然の未来を展開していきます。
なぜならば、イメージできたことは実現しやすいからです。
スポーツのイメージトレーニングもそうでしょう。
イメージできない体の動きは実際にできないんですね。
つまり未来のことを映像のようにリアルで五感で感じられるぐらい事細かくイメージできるようにカウンセラー側は質問していく必要があるのです。
そしてそのことによりクライエントに解決のイメージを構築してもらい実現へとつなげていくのです。
人前で話す機会が近いあがり症の方に聞きます。
「あなたが本番に臨んで緊張している時、10%あがり具合が楽になったとします」
「その時に何が違っているでしょう?」
「あなたの気持ちは?体は?」
「何が変わってますか?」
「すると聞き手はどう違っていますか?」
マズローの欲求5段階説
人がその人生において勇気を必要とする場面は、何度となく訪れるでしょう。
時に立ち向かい、また、時にその場面から逃げ出すこともあるでしょう。
これまで私は、そういった場面で支えになるものは人とのつながりであり、またアドラー心理学でいう所の共同体感覚であろうと伝えてきました。
今日はもう一つ追加します。
それは価値観です。
アブラハム・マズローは人間の欲求には五段階があると唱えました。
それがマズローの欲求五段階説として広く知られています。
それは以下のようなものです。
まず第一段階として生理的欲求。
これは食欲、睡眠欲などの生きていくための基本的欲求を示しています。
第二段階は安全欲求。
これは危険を回避したい。例えば雨風をしのぎたい、外敵から身を守りたいなど。
あるいは健康、経済的欲求などです。
第三段階として社会的欲求(所属と愛の欲求)です。
これは会社、家族、国家等の集団への所属欲求、また仲間を求めることなどです。
第四段階として尊厳欲求(承認欲求)。
これは他者から認められたい、尊敬されたいといったものです。
最後に第五段階として自己実現欲求です。
これは自分の能力と可能性を最大限に発揮したいという欲求です。
さらにマズローは晩年、自己実現欲求にもう一つ上の欲求があるとしました。
それは自己超越欲求です。
それは、自己のためだけではなく、他者のために役立ちたいといったものです。
人ぞれぞれ、これら五段階の各段階の欲求があるでしょう。
強弱もあれば欠けている所もあるかもしれません。
ただ、こういった各段階の欲求でより高次のものがあるかどうかが、さらに言えば高次の欲求すなわち価値観があるかどうかが、ここぞという勇気が必要な時に踏ん張れるかどうかの分かれ目となるのではないでしょうか?
それはあがり症の人にとっては、回避するかどうかの大きな境目となるのです。