入れ歯とインフォームドコンセントとSDMと
去年の8月から部分入れ歯をしています。
もう喋りにくくて喋りにくくて、しかも口の中に異物が入ってるようで鬱陶しくてたまりません。
なのに、こんなモゴモゴした口で講演や講座やカウンセリングをやったりして、はや半年以上。
今、通っている歯医者では部分入れ歯になる前に荒療治であれやこれや直してもらいました。
そうしてインプラントかブリッジかの治療かと思っていたのですが、ところが物事はそう簡単に進みません。
メンテナンスがひどいということで、まずは子供よろしく歯磨きの練習です。
これだけで何回通ったことか。
しかもたかが歯磨きの練習なのに結構高い。
マジかよ。
やっと終わったと思ったら、歯槽膿漏がどうのとか言われて何回にも分けて麻酔を打って歯石を削って、消毒してといった感じで今その途中です。
しかもこれまた保険利いてるのに結構高い。
勘弁してよ。
その後は虫歯の治療も待っているようです。
要はインプラントとかブリッジの前にあれこれやってからじゃないとだめだよということらしいんですね。
なんかその上から目線というか言うことに従え的な雰囲気に、いちいちイラッとして歯医者登校拒否に数ヶ月なりました。
けれどもやっぱり喋りにくいんでダメ生徒よろしくやっぱり僕が悪かったですと再度通い始めたんです。
しかし、悔しいからブツブツ心の中で言うんです。
今時の医者のくせにインフォームドコンセント(情報提供による合意)さえできてない、パターナリズムだ。
パターナリズムとは父権主義という意味で、昔気質の黙って医者の言うことを聞きなさいといったあり方です。
選択肢もへったくそもあったもんじゃありません。
超ムカつきますけど、他の医者に行ったらまたレントゲンからやり直しかと思うとうんざりしてやっぱりこっちに来てしまうんですね。
なんだかんだ厳しいけれども治療はしっかりしてるからです。
私は精神科医療の現場を見てきましたが、やはりこのパターナリズムというものはありました。
しかし、次第に患者目線にはなってきてるのかなという風に思います。
でも、実はそれだけじゃまだ足りないんですね。
今、SDM (Self Decision Мaking)という考え方があります。
セルフディシジョンメイキング、つまり共同意思決定です。
要はインフォームドコンセントで情報提供されたって、エビデンス(科学的証拠)がどうの言われたって患者は戸惑ってしまうことがしばしばあります。
なぜならば患者にとっての優先順位は、医者にとっての優先順位とは異なることがあるからです。
今すぐインプラントつけたい人もいるでしょうし、インプラントが怖くて部分入れ歯の方がマシだという選択肢もあるでしょうし、客観的な判断と主観的な判断っていうのは違うんです。
医療側は全く知っていないと言ったら言い過ぎかもしれませんけど、医者の正しさは時として患者にとっての誤りになることがありうるということを心すべきことと思います。
これは終末期医療などでの胃瘻や延命措置等の判断では、隠れたところで結構起こっていることと思います。
おそらくお医者さんも、何が良くて何が悪いのが悩まれている方もきっといるのではないかと思います。
もはや時代はインフォームドコンセントから、必然的にSDM の流れになっていくのではないかと思います。
つまり必要なことは対話です。
医療側も患者側もあれやこれやと話し合いながら、「証拠」とか「選択肢」とかより、「納得」してやっていくこそが大事なのではないかと思うのです。