自己臭恐怖症

日本独自の精神療法である森田療法は、現在、諸外国においてもその有効性が認識されてきています。

森田療法の対象とする疾患は神経症と呼ばれるものであり、具体的にはあがり症、赤面症、強迫性障害、書勁、視線恐怖、自己臭恐怖等々があります。
現在は、ガンの終末期患者などにもその適用が広がっています。

森田はこれら神経症の症状の仕組みを皆同じものとして捉えました。

一言で言うなら、気にしないようにすればるほど気にしてしまう病といった所でしょうか。

私にも、これら対人恐怖症の中でいくつか該当するものがありました。
その中の一つに自己臭恐怖症があります。

かれこれ20年以上前、高校生の頃、ふと自分の足が匂うことに気づきました。

0か100かの極端思考だった私には、微かな匂いでもあってはならないことです。

何度も何度も風呂場で洗っては匂いを嗅ぎ、微かな匂いに、あぁ、と失望します。
今考えるとアホかといった所ですが、当時の私は真剣でした。

学校に行っても自分の靴の匂いを嗅ぎます。匂いは確かにします。

そこで取った私の対応は消臭スプレーでした。
なんて賢いと言いたい所ですが、当時の消臭スプレーは今と比べていまいちだったんでしょうかねぇ、グレープフルーツか何かの匂いのするスプレーを買ってブシューってかけたら今度は余計ひどい匂いがしてきて、慌てた私はその匂いを封じ込めるかのように靴を足に入れました。

そんな状態で教室に入ったら、それはもう明らかに周囲の様子が変だったのを覚えています。
もう絶望的シーンです。

こんな風に対人恐怖症の症例は、他人事だと何をそんなことをと、おかしな話なんですが、当の本人は真実悩んでいるんですね。

これは、強迫性障害しかり、あがり症しかりです。

ホント、そうでない人から見ると取るに足らないことなんですよね。
なんで、こんなことで悩まなきゃなんないんでしょうね。

 

プリテンド・ミラクル・ハプンド

あがり症を語る⑦ではミラクルクエスチョンのことを書きました。

 

ミラクルクエスチョンとは問題を抱えて行き詰っているクライエントに、問題はとりあえずそのままにして奇跡が起こった一日の詳細を語ってもらうカウンセリング技法です。

 

奇跡が起こっているので何でもありです。

カウンセラーの誘導により、普段のマイナス思考の束縛から解放されて、これまで想像もしたことのないようなミラクルな一日を克明に想像し語っていきます。

その想像すること自体が治療的な過程となります。

 

そして実は場合によってはこの続きもありなんです。

それはプリテンド・ミラクル・ハプンドという技法です。

訳すと、奇跡が起こったように振る舞うという意味です。

 

今、非常にブームになっているアドラー心理学にも同じような技法で「アズイフ(as if)テクニック」というものがあります。

これも同様に「まるで~のように」と自分自身が望む自分になりきって振る舞うというものです。

 

それで、このプリテンド・ミラクル・ハプンドですが、まさにミラクルクエスチョンで克明に描いた一日のようにやってみようというものです。

 

例えばあがり症のケースでやってみると、

朝、学校(会社)に行って、周りの人に自分からおはようと声をかける。

そして、天気のことや日常の他愛のない会話をする。

 

授業(仕事)が始まっても心は落ち着いていて、今、ここでなすべきことを淡々とこなしている。

先生にあてられるのではないかという心配はしない。

 

仕事中電話が鳴っても焦らず取って一語一語ハキハキ答える。

さわやかな感じで電話を終える。

 

会議の際は、自分が話す前の予期不安に襲われることはなく、議論に集中している。

質問されても慌てず淡々と答える。

 

休み時間や昼休みは、同僚や友達と気構えることなくお喋りをする。

そして楽しく笑う。

 

食事中は何人かと一緒のテーブルに座り、自分が浮いてしまうことなく楽しく話す。

 

上司からの質問には冷静に適確に答える。

 

飲み会や忘年会では、疎外感や孤独感を感じることなく、話の輪に自分も加わる。

 

家に帰り、ご飯を食べお風呂に入り、眠くなってきたので布団に入りささやかな幸せ感を感じながら、やがてすやすやと眠りに入る・・・

 

これ、あがり症でない人から見たら、だから何?かもしれませんね。

 

ただ、あがり症の人にとっては間違いなくミラクル・ハプンドなんです。

奇跡の一日なんです。

これをやると劇的に変わることもあるようです。

 

ただ、恐らくは自分一人でやるにはなかなか難しいと思います。

一緒にミラクルを共有し、背中を押してもらい、結果を一緒に喜んだりがっかりしてくれる伴走者の存在がいるかどうかが大きな要素ではないかと思います。